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最高裁判所第一小法廷 昭和57年(オ)636号 判決 1983年2月03日

上告人

魚津照子

右訴訟代理人

藤本猛

被上告人

谷口敏明

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人藤本猛の上告理由について

人事訴訟手続法一五条一項による離婚の訴えにおいてする財産分与の申立ては、本来家事審判法九条一項乙類五号に定める家庭裁判所の権限に属する審判事項につき、手続の経済と当事者の便宜とを考慮して、特に例外的に訴訟事件である離婚の訴えに附帯して同一の訴訟手続内で審理判断を求めることを許したものにすぎないから、附帯請求としての財産分与の申立てに対して訴訟手続内で審判するについては、本来的請求である離婚の訴えが現に係属していることがその前提要件をなし、右訴訟の過程においてなんらかの理由により離婚の訴えそのものの係属が失われたときは、残存する附帯的請求である財産分与の申立てについてはもはや当該訴訟手続内で審理判断することができず、右申立ては不適法として却下を免れないものと解するのが相当である。

これを本件についてみると、本件記録及び原審の確定したところによれば、上告人は被上告人に対し離婚の訴えとともに財産分与の申立てをしたが、昭和四七年一一月一日第一審裁判所において協議離婚をする旨の和解が成立し、同月二日協議離婚届がされ、離婚請求にかかる訴訟は終了したことが認められるから、そうである以上、右財産分与の申立ては、もはや当該訴訟手続内で審判することが許されないこととなり、不適法として却下されるべきである。したがつて、これと同趣旨の原判決は正当として是認することができ、論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(団藤重光 藤﨑萬里 中村治朗 谷口正孝 和田誠一)

上告代理人藤本猛の上告理由

第一点 原判決は判決に影響を及ぼすべきこと明なる法令の違背があるので破棄されるべきである。

一 原判決は、離婚に伴う財産分与の申立は、人事訴訟手続法一五条一ないところであるが、離婚の訴と同時に財産分与請求をなしてこれが適法に項にもとづく離婚の訴えに附帯してなす場合のほかは、家事審判法九条に定める乙類審判として家庭裁判所の審判事項に属するとしたうえ、本件においては、訴訟の中途において昭和四七年一一月一日第一審裁判所において協議離婚をなす旨の和解が成立し、同月二日協議離婚届がなされたので財産分与の申立は訴訟手続で審理する根拠を失い、不適法として却下を免れないとしている。

二 財産分与に関する人事訴訟手続法及び家事審判法の規定が原判決の示すとおりであることは議論の余地は係属した以上、裁判所はこれに対して裁判をすべきであつて、請求の中途、離婚が和解により終了したとしても一旦係属した財産分与請求を不適法として却下すべきではない。

三 したがつて、当該財産分与請求を不適法として却下した原判決は、人事訴訟手続法に関する法令の適用を誤つて、その結果判決に影響を及ぼすべきことが明らかであるので、当然に破棄されなければならない。 以上

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